Japanese History Digest 公式ページへようこそ!

江戸時代 後期
欧米列強の接近と開国
19世紀に入ると、欧米諸国は産業革命を背景にアジアへの進出を強め、日本にもその影響が及び始めた。1837年のモリソン号事件では、漂流民の送還を目的として来航したアメリカ船を、日本は異国船打払令に基づいて追い返し、対外姿勢の厳格さを示した。しかし、こうした方針もやがて転機を迎える。
1853年、アメリカのマシュー・ペリー提督が艦隊を率いて浦賀に来航し、開国を強く要求した。幕府はその圧力を受け、翌1854年に日米和親条約を締結し、下田と函館の開港を約束した。さらに1858年には、大老・井伊直弼のもとで日米修好通商条約が結ばれ、日本は関税自主権を失い、領事裁判権を認めるなど、不平等な条件での開国を余儀なくされた。
このような急激な国際環境の変化と、それに伴う物価の高騰や社会不安は、幕府に対する不満を高め、尊王攘夷運動の広がりを招いた。条約に反対する公家や諸藩の志士たちは、井伊直弼の強権的な政策に反発し、安政の大獄で弾圧された後も抵抗を続けた。1860年には井伊が桜田門外の変で暗殺されるに至り、幕府の威信は著しく損なわれていった。
江戸幕府の滅亡
開国以後、幕府は国政の主導権を維持しようと努めたが、内外の情勢は急速に変化していった。攘夷を掲げていた長州藩は、実際に外国船と交戦して敗北を喫し、現実を認識して開国・近代化の道へと舵を切った。こうした中、幕府に対抗する動きを強めていた薩摩藩と長州藩は、1866年に坂本龍馬の仲介によって「薩長同盟」を結び、倒幕の動きを本格化させた。
翌1867年、第15代将軍・徳川慶喜は、政権を朝廷に返上する「大政奉還」を行い、形式的には幕府政治に終止符が打たれた。しかし、これを表面的な権力返上と見なした薩長勢力は、1868年に鳥羽・伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争を開始し、武力による政権掌握を進めていった。
内戦は全国に広がったが、1868年4月には西郷隆盛と勝海舟の交渉により江戸城が無血で開城され、首都での大規模な戦闘は回避された。そして1869年、戊辰戦争の終結とともに徳川政権は完全に崩壊し、約260年にわたる江戸幕府の歴史は幕を閉じた。こうして日本は、明治政府のもとで近代国家への歩みを始めることとなった。
江戸時代 後期の年表
1842年 | 天保の薪水給与令を発布。異国船打払令を緩和し、遭難船への援助を認める。開国の予兆が現れる。 |
1843年 | 上知令を発布。江戸・大坂周辺の大名領を幕府直轄地としようとしたが、反発により撤回される。 |
1844年 | オランダ国王が将軍に開国を勧告。幕府は外交的圧力への対応を模索し始める。 |
1853年 | アメリカのペリー提督が浦賀に来航し、開国を要求する。翌年再来を予告。 |
1854年 | 日米和親条約を締結。下田・函館を開港することが約束され、鎖国政策が実質的に終わる。日英、日露、日蘭とも同様の条約を結ぶ。 |
1855年 | 安政の大地震(江戸大地震)が発生。都市部に甚大な被害を与える。翌年にかけて災害と疫病が続く。 |
1856年 | ハリスが下田に着任し、通商条約の締結を求めて交渉を開始。 |
1858年 | 日米修好通商条約を締結。不平等条約として領事裁判権を認め、関税自主権を放棄する。井伊直弼が大老に就任。 |
1859年 | 安政の大獄が本格化。尊王攘夷派の公家・志士らを弾圧。横浜・長崎・箱館を開港。 |
1860年 | 桜田門外の変が発生。井伊直弼が水戸浪士らにより暗殺され、幕府の威信が低下する。 |
1861年 | 公武合体政策の一環として、和宮が将軍徳川家茂に降嫁。幕府は朝廷との融和を図る。 |
1862年 | 生麦事件が発生。薩摩藩士がイギリス人を殺傷し、後の薩英戦争の原因となる。 |
1863年 | 長州藩が下関で外国船を砲撃(攘夷実行)。その後、四国艦隊下関砲撃事件が起こる。 |
1864年 | 禁門の変(蛤御門の変)が勃発。長州藩が敗北し、第一次長州征伐が行われる。 |
1865年 | 第二次長州征伐に備え、幕府が諸藩に出兵を命じる。長州藩は洋式軍制を整備。 |
1866年 | 坂本龍馬の仲介により薩長同盟が成立。将軍徳川家茂が死去。幕府軍の長州征伐が失敗。 |
1867年 | 大政奉還が行われる。徳川慶喜が政権を朝廷に返上し、幕府体制に終止符が打たれる。 |
江戸時代 後期について学ぶことのできる施設
■浦賀レンガドック(神奈川県横須賀市)
https://www.wakuwaku-yokosuka.jp/uragarengadock.php
■横須賀市ペリー記念館(神奈川県横須賀市)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/5560/sisetu/fc00000442.html
■横浜開港資料館(神奈川県横浜市)
http://www.kaikou.city.yokohama.jp/
■下田開国博物館(静岡県下田市)
https://www.shimoda-museum.jp/
■旧イギリス領事館(開港記念館)(北海道函館市)
https://www.fbcoh.net/
■山手西洋館群(神奈川県横浜市)
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/yamate-seiyoukan/
■長崎歴史文化博物館(長崎県長崎市)
https://www.nmhc.jp/
■出島(長崎県長崎市)
https://nagasakidejima.jp/
■高知県立坂本龍馬記念館(高知県高知市)
https://ryoma-kinenkan.jp/